都会の花火

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近所で花火大会をするから行かないかと、バイトの女の子に誘われたのでついていった。

田舎者の私は、花火は川原の土手にビニールシートを敷いて見るものだと思っていた。
中学生の頃、友達と浴衣を着て、近所の川原まで見に行った。夜に子供だけで外出できるのがとてもうれしかった。虹をくぐろうとする子供みたいな気分で、花火のあとを追って遠くまで走った。浴衣の帯を締めていなければ、お腹の皮が破れるんじゃないかというくらいの大音量の中で、降って来る光を全身にあびて、恐ろしくて一言も喋らず、まばたきもできずに、ひたすら光を見つめていた。

私の部屋はビルの谷間に隠れるように存在するささやかな住宅街の中でも格別にささやかな安アパートであり、どれだけ周りを見渡しても開けた場所というのが見つからない。

山もなければ海も川原もなく、見上げれば奥行きのない幾何学模様の空が浮かんでいる。



こんなとこで花火ができるもんかな?と思いながらも会場に向かうと、通り道のあらゆるところに、人々が腰を下ろしている。

花壇のレンガや、郵便局の駐輪場や、事務所の階段など、座れそうなところにはどこにも人が座っていて、缶ビールをあけたり、スナック菓子をつまんだりしている。

高知の土佐道路でいつか見た、暴走族のパーティーみたいだった。道路を何台ものバイクがものすごいスピードと騒音をたてて走り、その両脇の歩道を、何十人もの長ランやボンタン姿のヤンキーが埋めていた。全員うんこ座りをして、TUTAYAの青白い光に照らされていた。

ここでは、浴衣姿にツンツンした髪の若者たちや、寝巻きに近い格好の老若男女が歩道を埋め、何十人もの警察官が大声を張り上げていた。

どちらにしても異様な光景だった。

ところ変われば、花火の鑑賞方法も変わるものだなぁと思いながら、もっと近くで見ようと会場の方に向かって歩いた。

そのうち花火の音が聞こえ始めたが、一向に花火は見えない。きょろきょろと探していると、うっそうと茂った木の向こう側に、ちらちらと光が見える。石の壁で囲まれた会場の向こうにはびっしりと木が生い茂り、会場の周りをどこまで歩いても、花火の全貌を眺めることの出来る場所は見つからなかった。

道の警官に聞けば、会場に入るためのチケットは、5,6千円だということだった。考えてみれば、一玉何万円もする花火を何万発も打ち上げるのには、莫大な費用が必要なはずだった。見たければお金を払えというのは、もっともな言い分かもしれない。

私たちはあきらめて道端に立ったまま、木々の間から漏れる花火のかけらを眺めた。
木から流れ星が飛び出しているようにも見え、これはこれで素敵な眺めだった。

道端に陣取った人々は、はたして花火を見ることができたのだろうか。帰りに見上げたビルのミラーガラスに映った花火の姿が、一番完全体に近かったんじゃないかと思う。

ところ変われば花火の鑑賞方法もかわるが、花火は水辺で打ち上げるのが良いんじゃないかと思う。

来年は東京湾か隅田川に行って見たいなあ。
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by junocchi | 2010-08-20 21:37 | わたくしごと | Comments(2)
Commented by 色えんぴつ at 2010-08-20 22:47 x
風景まで細かく描写してあって、臨場感たっぷり、ステキなレポートやねっ☆
でも、その道端何かすごく怖そうだね★やっぱり都会ってイベントとかになると、とても危険なのかな?
…そして花火大会の会場に入場料いるってのにメチャクチャ驚いた!!自分んトコは場所タダ&早いモン勝ちだよ…。
Commented by junocchi at 2010-08-22 21:12
こんばんは。いやぁ、怖くはないですよ!でも、とにかく人が多いので、意図しない事故なんかはしょっちゅうあるのかも…東京の人は基本的に優しいと思います。
わたしの田舎ももちろんタダだったのでびっくりでしたよ~!!東京でも協賛してお金出してくれる企業がたくさんある花火はタダでみれると思うんですけど、たまたま有料だったんです★
やっぱり何事も下調べは大切ですね。来年の夏こそは花火の臨場感を味わいたいです^^