容姿

わたしの指がもっと長かったら、煙草を吸っていたかもしれないと思う。
わたしの首がもっと長かったら、耳にピアスの穴を開けているはずだ。
爪のかたちが台形じゃなくて細長いオーバルだったら、濃い色のマニキュアを塗るだろう。
身長があと15センチあったら髪を黒いまま腰まで伸ばしてパーマをかけている。

一人の時、鏡ばかり見てしまう。
鏡に映った人の人生を想像する。どんな出来事がありそうで、どんな出来事がなさそうか。
どんな言葉をしゃべりそうか。どんな本を読んでそうか。
映画を見て、泣く。鏡を見る。いじらしい気持ちになる。
ふがいなくて、泣く。鏡を見る。怒りが込み上げる。
恋人と喧嘩をして、泣く。こっそりと鏡を見る。謝るか謝らないか決める。
鏡の中の人に似合う服を着せてあげるし、鏡の中の人に似合うようにお化粧をしてあげる。

実は私は透明人間で、鏡の中の童顔でちびで地味な人のために、毎日一生懸命世話を焼いている気がしてくる。
せめてもの抵抗に、濃いブラックのコーヒーを飲む。
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