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国立アトリエ終了についてのあれこれ

昨日9/2(月)を持ちまして、2年間に渡る国立におけるjunoの制作活動は終了致しました。
て書くと大袈裟過ぎるかな。もちろんjunoはこれからさきもこつこつと作品を作り続けて行きますよ。

でもこの国立アトリエは、私の中で一つ大きな存在ではあったわけなので、今日は国立アトリエについて思い浮かんだことを長々と、だらだらと書いてみようかなと思います。

月に2回を二年間。一回分おまけしてもらって
2×12×2+1=49日。
ひと月半とちょっと。案外少ない気もします。しかし、新宿から中央線に乗って国立まで、そこからとことこ歩くこと約10分間。を49回往復したと思うとなかなかです。通勤時間、のべ98時間。約4日間ですね。
それでも人生80年にしたらたいしたことはないし、世の中には沢山いるであろう、毎朝通勤2時間を40年くらい繰り返してるサラリーマンには鼻で笑われてしまうかもしれません。

でもこの二年間は私にとって大きな決断だったし、挑戦の日々でした。
そもそも知名度もなく、蓄えもなく、パトロンもいない、時給900円のアルバイトを掛け持ちしてなんとかその日暮らしをしてた私が、自分の住処とは別に制作のためだけの場所を借りて毎月家賃を払おうというのが無謀です。しかもわざわざ電車に乗って通わなくてはならない場所に。
しかし、それらのリスクを差し引いても、アトリエという言葉の響きは私にとって魅力的だったのでした。それに国立は大好きな街だし。
とはいえ最初にお話を持ち掛けられた時点では魅力的ではあるけど現実的ではないこの提案を、断る方向で考えていたのでした。
だけど。一度見てみなさいよ と言われ、まだ内装も終わってない、ガラーンとした殺風景なビルの一室に入った瞬間、なんだかものすごいわくわくとどきどきが脊髄を駆け抜け、ほとんど衝動的に借りる!借りたい!とお返事をしてしまったのでした。

そんなわけで実際借りてみると、案の定というかけっこう大変で、月二回だけそこへ行って作業するとなるとその都度材料から道具からすべて持って行き、また持って帰ってこなくちゃならないので当然ミシンなんか毎回移動させるのは無理、せっかく大きな机があっても、それをめいっぱい活用するだけの材料やらものさしやらハサミやらを持ち運ぶのが面倒で仕方が無い、じゃあいっそお店みたいにしちゃおうかと思っても、二週間に一度お店が開けるほどの作品をつくるのなんて無理だし、お客さんは来ないし。たまに顔見知りの人が訪ねてくれても、見てもらう作品がいつもあるわけじゃなく、お互いどうしてよいかわからない、寒い空気が流れたり。
正直最初の方はやっぱり失敗したかな?とか思ったものです。

転機は同じくアトリエで日曜日に活動していたカガモクさんご夫婦との出会いでしょうか。
彼らもアトリエを借りたは良いが少し持て余しており、なんとか良い風に盛り上げられないかと、村おこしならぬアトリエおこし、看板を作ってみたり、イベントを計画したりと、お二人は持ち前の行動力で、私は人と一緒にやるからにはご迷惑をかけられないと強迫観念に近い気持ちで、なんとか具体的な行動に踏み切って行けたのでした。
素朴で健康的で、奥様は美人でサバサバだし、きっとどんな人も好感をもってしまうこのご夫婦、私にはちょっと眩し過ぎて良い人過ぎて、一緒にいると自分のしみったれた根暗気質がぐりぐりと刺激される気がして最初は警戒していたのですが、仲良くなるにつれてお二人の類稀なバックグラウンドやヘンタイぶり(良い意味で!)、意外とひねくれた部分(良い意味で!)やふざけ気質(もちろん、良い意味で!)が垣間見られ、彼らの作品はもちろん、人柄が日に日に大好きになりました。
カガモクさんとはアトリエが終わってもイベントなど誘いまくって、なんとか関係を維持しようと画策しております。

そんな流れでアトリエ開始一年を過ぎた辺りからアトリエの有効活用に真剣に取り組み始めて、今年の春の私の個展でギャラリーの方のご協力もあって国立みんなのアトリエは少しづつ認知され、オーダーのご相談や受け渡しの場としてや、気軽なワークショップ、またはお茶を飲みながらの楽しいおしゃべりの場として、なんだか良い感じに機能し始めたのでした。

その矢先、詳しくは記しませんが他のテナントの方とのむにゃむにゃ、がありまして、流れに抗う気持ちもあったにはあったのですが、皆、どちらかというと前を見ている人たちで、戦ったり、起こったことを覆そうとしたりするのはすぐに飽きてしまい、丁度更新と重なったこともあって、手放すことになりました。

悔しいな、悲しいな、もったいないな、という気持ちもあるけれど、まぁ、そのくらいでお別れするのが良いのかもね、という気持ちもあったり。
まぁ、こういう時期なんでしょう。と、他のみんなも意外と冷静に受け止めていると思います。
何事もずっと続くということはないもので、私にしたってちょうど最近引っ越しをし、自宅で制作できる環境を整え始めたのは、案外こうなることを予感していて、用意周到に準備していた感がなくもないのです。
ちょうど時期を同じくして、じゃらんじゃらんの森の大幅なリニューアルも発表されました。
万物は流転する。紀元前500年の昔から、ヘラクレイトスも言っています。
行雲流水とは、私の好きな言葉です。
きっと生きていたらどんなことだって起こりうるし、このくらいの変化は全然想定の範囲内。ぜーんぜん受け入れ可能。
とはいいつつ、まるで蜘蛛が巣を張って獲物を待ち構えるように、あのアトリエでせっせと針と糸を動かしていると誰か素敵な人がやってきて、なんだか良い話を聞かせてくれて帰って行くという、ひたすら受け身の気楽なコミュニケーションが名残惜しくてたまりません。
新しいアトリエは自宅なので、こんな時間はきっと訪れないだろうけど、孤独な作業だって私は好きです。
だけどここで会った人たちみんな、これからまたお会いできますように。本当に良い学びと良い時間をありがとうございました。これからもよろしくお願いします。



2013年9月3日 juno
by junocchi | 2013-09-03 09:03